( )カッコ内は全部小声です。
スミスとルルに、桃太郎の説明をすることになった。
「⦅中略⦆こうして桃から生まれたので、桃太郎、と名前がつきました。桃太郎はすくすくと育ち――」
「え?人ってモモから生まれるの?」
「そ、それはね」
(子供からされて困る質問、ぶっちぎり1位のやつ!どうやって躱しましょうか!?)
「なぜ桃太郎は桃から生まれたか。それはややこしくなるから帰ってからにしよう。ヒビキ、続き頼む」
(上手いぞイサミィ!深入りさせずサラッと流した!)
(でもこれ、問題を先送りにしただけじゃないですか?)
(カトウ。スミス。ルルに聞かれたら適当にそれっぽい説明してくれ)
(丸投げされたー!)
(ルル、夜には忘れてくれ!)
「私は人々を苦しめる鬼、ええと、デーモンみたいなやつね。鬼を退治してきます!こうして桃太郎は――」
「鬼は何したの?」
「え?」
「どんな悪いことしたの?暴れるの?」
(どうしよミユ?そんなの気にしたことないんだけど)
(特撮だ!ルルちゃん特撮が好きだから気になるんですよ!適当に悪そうなこと言って!)
「適当って……。えーとね。お金を盗んだり、人を誘拐したりするの」
(やたら現実的な悪さだな)
(すぐ思いつくかー!)
「おばあさんが作ったきびだんご、あー、甘いライスボールみたいな食べ物なんだけど、きびだんごを持って行きました」
「おじいさんは?おじいさんは何するの?」
(爺さんは芝刈りしただけだよな)
(桃拾ったのも、きびだんご作ったのもおばあさんだよね。おじいさん何してんの?)
(ここはカトウミユ、いきます!)
「おじいさんはですね、桃太郎に自分の鎧や刀をあげました。実はとっても強い人で、桃太郎の武術の先生だったのです!」
「おおっ、シショーだな!」
「シショー!」
「『お前に教える事は何もない。行けい、桃太郎よ!悪を成敗するのじゃ!』
こうして桃太郎は旅に出たのです」
(盛ったなー)
(盛ったねー。そっか。そういうのでいいのか)
その後も、ルルからのツッコミは続き、その度に話を盛るヒビキ達。
「犬、猿、鳥。仲間少ない」
「大丈夫!ケルベロスとキングコングとフェニックスぐらい強いから!」
(男子小学生か?)
「どうやって仲間になったの?」
「おばあさんからお団子もらったでしょ。それをあげると『ありがとう!あなたと一緒に戦います!』ってなるの」
「それだけで言う事聞くって、ダンゴになにか薬でも?」
「正義の味方なんで薬とかじゃないです。とにかく美味しすぎて言う事聞きたくなるだけで」
「それはそれで怖いな!」
「そうそう。それでおばあさんは魔女じゃないか疑われて、当時護衛だったおじいさんと逃げたの。実はおばあさんは――」
(ちょ、ヒビキその辺で!)
(ダメ?実は高貴な血筋のパワーで、とか考えたんだけど。そういうの好きでしょ?)
(好きですけど話が広がりすぎるし、桃太郎の影が薄くなっちゃう!)
「犬は番犬だったんだが、人懐っこいからクビになった」
「お腹減った時に美味しい物くれたから、感激して着いてきちゃった」
「なるほど。番犬に向いてないな」
「大猿は口にダンゴをつっこんだんだ。アトラトル、ええと、槍を投げる道具で」
(おじいさんの設定が生きた!)
「アトラトルで口の中を狙うって、仕留める気じゃないか」
「じゃあ、ダンゴを丸太の先にくくりつけて突撃した」
(急に脳筋になった)
「フェニックスにダンゴを全て燃やされ、桃太郎が諦めかけたその時、おばあさんがやってきました」
「『待たせたね!きびだんごの追加だよ!』」
(なんで女傑に!)
(特撮見ないから、ジブ〇とバタ〇さん参考にしたんだけど、こういうのじゃないの?)
「こうして桃太郎たちは鬼ヶ島へやって来ました」
やっとここまできた。長かった。
感慨に浸るヒビキ達を余所に、ルルの更なるツッコミが。
「鬼は何人いるの?ショーグンとか、ハカセとか、あと女の人もいるよね?」
ギブアップした。
「さっきまでの話は無しで!」
~改めて桃太郎を説明~
「ヒビキ達が言ったのが面白かった!スミス、ルル達でシテンノー作ろ!」
「いいな!パワー系、テクニック系、エスパー系も欲しいな」
「とりあえず、遊園地回ろ?」